- 作者: 法条遥,usi
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 単行本
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彼は私の目の前まで近付いて来ると、顔を寄せて、面白そうに囁いた。
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「改めて自己紹介するよ。僕の名前は園田保彦。本名は、つまり二三〇〇年代で使っている名前はって事だけど、この時代の人間にはちょっと発音が難しいから秘密ね。僕は」
二千、
さんびゃく……?
「西暦二三一一年からやって来たんだ。この時代では……、タイムリープって呼ばれてるのかな」
この時から、私と彼の一夏の物語は始まった。
西暦 2002 年夏.石田美雪は 1992 年の夏からやってくることになっている 10 年前の自分を待っていた.大切にしまっていた携帯電話を取り出し,当時の甘酸っぱい思い出とともに.しかし,今日この時間に現れるはずの 10 年前の自分は現れなかった.まさか,絶対に変わらないはずの「過去」が変わっている……?
変わらないはずの過去は本当に変わってしまったのか.日本ホラー小説大賞受賞作家による SF ミステリ.1992 年と 2002 年を交互にしながら,「SF 史上最悪のパラドックス」を描いてゆく.『時をかける少女』をリスペクトしているのは明白なのだけど,その爽やかさは芥子粒ほどしか残っていない.はじめのちょっとした違和感が,読んでいくうちにじわりじわりと気持ち悪さに変わっていく感覚がある.「タイムリープ」を使ったトリックやその動機付けといったミステリ的な部分には甘いところもありそうかな(ここらはどこまでこだわるのが適当か私には分からないのだけど).読みやすいとは思うので,カバー,帯,あらすじ,気になるところがひとつでもあれば手にとってみていいと思いますよ.