山川進 『うちの魔女しりませんか? 3』 (ガガガ文庫)

うちの魔女しりませんか? 3 (ガガガ文庫)

うちの魔女しりませんか? 3 (ガガガ文庫)

「文哉は、私を魔女だと言った」
段差の上に立つマーヤが、僕を睨みつけたまま表情を硬く強ばらせる。
「……それは、半分当たってる」
「半分?」
淡々と、普段と変わらぬ声のトーンでマーヤは己の素性を打ち明ける。
「私は、魔女と人間の間に生まれた子供よ」

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文哉が地上最後の魔女,ミラと出会い,別れてから一か月が経った.心にぽっかり穴の空いた文哉は,魔女を探して世界を旅していた父親に会おうとする.父親が行方不明になった土地,ヒマラヤへやってきた文哉は,ひとりきりで暮らす少女,マーヤに出会う.
人間と魔女のハーフであるため不吉とされ,ずっと避けられてきた小さな女の子との雪山行.この世界における絶滅危惧種である「世界一有名な希少生物」,魔女をめぐる物語.三巻は,時系列的には一巻(感想)の出来事から約一ヶ月後の話(二巻(感想)は一巻と同じ時期).完全にクローズしたと思わせる物語を,非常に慎重に広げて,うまくつなげている印象がある.というのは二巻読んだときも思ったこと.細い希望のようなものを橋渡しして,物語の世界に厚みを持たせることに成功していると思う.母親と死に別れ,辛い思い出しか持たない少女が心開いてゆくという,単巻で見るとそれほど複雑ではない物語も,ぐっとくるものがある.細かい疑問も正直あるけど,巻を追って盛り上がっているのは良いと思う.というかマーヤがイラストとの合わせ技でえらく可愛いくてな.てことで良かったです.