高岡杉成 『こわれた人々』 (ガガガ文庫)

こわれた人々 (ガガガ文庫)

こわれた人々 (ガガガ文庫)

「──だから、『不安定』ってことなのよ、結局」
いたたまれなくなったのか、亜紀子が大きな声で総括した。
「思うんだけどね、世の中には『本気でワケわかんないヤツ』ってのがいんのよ。マジでどーしようもないヤツってのが。単純にバカとか単純にエロいとかそういうんじゃなくて、フツーの感覚が一切通用しないタイプの『おかしいヤツ』。それが向井ってわけ」

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四月下旬.高校一年生の倉橋美冬は,ある朝の通学途中,クラスメートの向井城介の頭を轢いてしまう.慌てる美冬だったが,城介は心ここにあらずといった感じで様子がおかしい.あとから聞いたところによると,城介は小学生のころから奇行を繰り返す「不安定」な子どもであったらしい.
誰にも見えない「ウラビト」と戦うおかげで誰からも理解されない向井城介と,ある経緯から城介を理解しようとする倉橋美冬のふたりの視点から描かれてゆく,ちょっと変わったアプローチのコミュニケーションの物語.第 6 回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作.導入はホラー風味.アッパー系で金槌を振り回す幽霊(ウラビト)とかちょっと嫌すぎる.それぞれがひとりぼっちだったふたりが,周りを信用すること,巻き込むことの大切さに気づいていくくだりは,読み終わってみると爽やかさが残る.読んでる最中は気持ち悪さが先に立つのだけど,十二分に青春ものなんだなあ,と.余談だけど,これがホラーや SF のレーベルだったら,主従が逆になっていたのかもしれんなあ.良かったです.