円城塔 『バナナ剥きには最適の日々』 (早川書房)

バナナ剥きには最適の日々

バナナ剥きには最適の日々

想像の友人たちを自在に捨てることができるとわかった以上、拘る理由が見当たらない。むしろ一旦つくっておいて、自分の身が危ないからって捨て去ってしまう方が問題とさえ思えてくる。そんなことなら最初から作らなければ良いのである。ちょっと寂しくなった時には、友人を捨てた記憶を作り出し、どこまでも哀しめばそれで済む。友人本体を作り出すより、手間も資源もお得である。
だから僕は、暇な時にはバナナ星人と遊んでいる。
そんなもの、いようがいまいが、どうでも良いから。

バナナ剥きには最適の日々

「パラダイス行」「バナナ剥きには最適の日々」「祖母の記録」「AUTOMATICA」「equal」「捧ぐ緑」「Jail Over」「墓石に、と彼女は言う」「エデン逆行」の九短篇を収録した,芥川賞受賞第 1 作となる「どちらかというとわかりやすい」(帯より)短篇集.説明に用いられるアイテムや,表面的に進行している事象が(比較的)身近なものが多いのが,「どちらかというとわかりやすい」部分なのかな.芯はそれほど(たぶん)変わっていないので,「わかりやすい」と言えるものでもないような.というより「どちらかというとわかりやすい」部分との乖離が大きくなっていて,実はそんなにわかりやすくもないのでは,ということを思った.面白かったのは間違いないけど,今まででいちばんひーひー言いながら読んだ作品集かもしれないです.