ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田薫・福原美穂子訳 『特捜部Q ─キジ殺し─』 (ハヤカワ・ミステリ)

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)

「解決されないままの暴力事件の記事がいくつか入っています」とユヴェッテは続けた。「それから、キジ殺しの記事も」
「キジ殺し?」カールは問いかけるようにくり返した。
「ええ。それ以外にああいう人たちのことをなんと呼べばいいのかしら?」

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未解決事件を扱うコペンハーゲン警察の部署である特捜部Q は,あるきっかけから二十年前に惨殺された兄妹の事件に取り掛かることになる.
「特捜部Q」シリーズ二作目.昔の事件の影にちらつくのは,寄宿学校時代から始まるデンマーク上流階級のエリートたちの交流と,ある強い復讐の念だった.ホームレスに身をやつし,かつての仲間から逃げ続ける女と,彼女を追い,密かに恐れる三人のエリートをカール・マークとアサドの凸凹コンビが追求する.ストーリーそのものは比較的わかりやすいものではあるのだけど,まるっきりのクズである三人のクズっぷりには義憤を掻き立てられ,彼らへの復讐の念に駆られた女・キミーの復讐劇には,なんというか非常に落ち着かない気分にさせられる.狂気というか,執念というのか,様々なものを(オーバーすぎるほど)抱えたキミーというキャラクターからまったく目が離せなくなってしまう.カールとアサドのコンビも,まだまだ噛みあうような噛みあわないようなだけど,徐々にこなれていく様子についニヤニヤしてしまう.バディものとしてもこなれてきている感じ.すげー良かったです.