- 作者: デイヴィッド・ゴードン,ニック・ピゾラット,トム・フランクリン,スティーヴ・ハミルトン,ダグ・アリン,トマス・H・クック,デイヴィッド・ベニオフ,ベス・アン・フェンリイ,早川書房編集部,田口俊樹,伏見威蕃,越前敏弥,東野さやか,青木千鶴,冨永和子,府川由美恵
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/03/09
- メディア: 単行本
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「黒人にしろ、白人にしろ、この戦いのおかげでましになった人間なんか、ひとりもいるもんか。俺たちが自由にした奴隷は、行く場所も、食べるものも、土地もない。さっきも言ったけど、この戦争にはもう正しい側なんかないみたいだ。なんでもいいから、とにかく家に帰りたいよ」
ライラックの香り
「ああ、その気持ちはわかる」ガスはうなずいた。「よくわかるよ」
(前略)ぼくは自分の気配を消すために本を読み、スパイが歯の隙間に青酸カリをひそませるように本を持ち歩いた。本を愛する者にとっては、言葉こそが毒となる。ぼくらは一冊の本を閉じるたびに墓穴から這いだし、新たな生命を生きているのだ。
クイーンズのヴァンパイア
ポケミスにて邦訳が発表された作家たちの短篇を集めた,日本オリジナル短篇集.収録される作家は『二流小説家』(感想)のデイヴィッド・ゴードン,『逃亡のガルヴェストン』(感想)のニック・ピゾラット,『ねじれた文字、ねじれた路』のトム・フランクリン&ベス・アン・フェンリイ,『卵をめぐる祖父の戦争』(感想)のデイヴィッド・ベニオフ,『解錠師』(感想)のスティーヴ・ハミルトン,『ローラ・フェイとの最後の会話』のトマス・H・クック,そしてアメリカ探偵作家クラブ受賞作家ダグ・アリン.ポケミスオールスターというか翻訳ミステリというか,まさにショーケースの趣がある.個人的に好きなのは,ロシア・チェチェンを舞台に,若い兵士の目から戦争を見るデイヴィッド・ベニオフ「悪魔がオレホヴォにやってくる」,かつてのクラスメイトを追うロードノベルニック・ピゾラット「この場所と黄海のあいだ」,南北戦争末期の混乱と疲弊をある家族の目から描いたダグ・アリン「ライラックの香り」というあたり.他も良作のそろった読みやすい短篇集だと思うので,軽い気持ちで読んでみればいいじゃない.で,気に入った作家がいたら,それぞれの単著も読んでみればいいじゃない.