沖ハサム 『あやしや/いなき』 (講談社BOX)

あやしや/いなき (講談社BOX)

あやしや/いなき (講談社BOX)

いいや。良く話を聞きたまえよ。駄洒落抜きには幽霊にも劣る、か弱い道化。それが私
──私は、ただの文字(キャラクター)だ。符号の人格(キャラクター)
「ただの文字が……意識を持つのか?」
きみだって似たようなものじゃないかね? 微電流の陰陽(オンオフ)の並びごときが持ち得た意識だ
「……確かにの」

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識与 267 年.都市国家・八百八町の辺境で暮らす素浪人のいなきは,歌舞伎町の私娼窟で起こった行方不明事件の調査を依頼される.そこでいなきは異形の破戒僧と,世界を破滅させようとする目論見に遭遇する.
第 4 回 BOX-AiR新人賞受賞のサイバーパンク×時代伝奇.舞台はどこかのサーバー上に構築された,「どう足掻いても抜け出せないどん詰まり」の仮想世界上の都市国家・八百八町.主要人物たちは自分が仮想の存在であることを知っている,という.かなりの分量がある剣戟シーンは,並列起動抜刀術(デュアル・ブート)やら量子転換刀(フリップ・フロップ)やら,いかにもな感じでカッコいい量子力学的剣術を出しながらも,かなりしっかり描かれている印象(抜かれる瞬間まで()()が重ね合わせになっている居合いとか,理屈はともかく超カッコイイじゃない).肉体の細かい動きに凝った描写をしていて,ただのキワモノではなくしっかり読ませてくれる.凝ったルビや,けれん味を効かせたテキストも,いかにもサイバーパンクっぽくて楽しい.ニンジャスレイヤーが好きなひとなら気に入るはずなので読んでみるといいかも.良いものでした.