彩坂美月 『文化祭の夢に、おちる』 (講談社BOX)

文化祭の夢に、おちる (講談社BOX)

文化祭の夢に、おちる (講談社BOX)

「あの……」
遠慮がちに沙貴が口を開いた。皆の視線を向けられ、一瞬たじろいだようにまばたきをする。
しかしすぐに、意を決して、という表情で声を発した。
「皆が、いきなりどこかに消えてしまったんじゃなく」
唇を舐め、慎重に言葉を続ける。
「──消えたのは、もしかして、私たちの方なんじゃないでしょうか……?」

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7 月 4 日.三年に一度の文化祭を前日に控え準備に賑わう桐乃高校で壁画が倒れるという事故が起こる.事故に巻き込まれ意識を喪った円たち五人が目を覚ますと,そこは無人となった町だった.
神隠しにあった五人の学生たちの運命やいかに.2012 年本格ミステリ大賞最終候補作『夏の王国で目覚めない』の著者の最新作.ミステリ風味の青春群像劇,かな.鬱屈や葛藤を抱えた五人が異様なシチュエーションに巻き込まれる,というストーリーラインはオーソドックスなもの.しかし,五人の中にひとりいるキチガイがきつい.共感も理解もできない(したくない)描き方をしていて,物語そのものへの没入まで妨げられる.工夫のしようはあっただろうに,なんでこんな安直なキャラクターを出しちゃったのかなー,と気になって仕方なかった.