ジョン・スラデック/柳下毅一郎訳 『遊星よりの昆虫軍X』 (ハヤカワ文庫SF)

遊星よりの昆虫軍X (ハヤカワ文庫SF)

遊星よりの昆虫軍X (ハヤカワ文庫SF)

「失礼だが、笑わせてほしい、ボート」電話と同じように、生き物は平坦なハという音をふたつもらした。「人類が許してくれると信じるほど、わたしはナイーヴではない。もしこの身を人間の手にゆだねたら、わたしは破壊されるだろう。なんらかの理由をこしらえて、当局はわたしに死をもたらす。わたしの生存のチャンスは、まさしくフランケンシュタインの怪物程度でしかない」
「それはどういう意味です?」
「わたしは地球じゅうを追われ、最後には殺されるだろう」

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一念発起して渡米した売れないイギリス人作家のフレッドだったが,代理人への売り込みに失敗.しかたなくテクニカルライターの募集に応募するが,何かの勘違いでやったことのないプログラマーとして雇われてしまう.彼が配属されたセクションでは,ロボットの開発を行なっていた.
アメリカにやってきたばっかりに,怒涛のように色んなヒドイ目にあったり巻き込まれたりするイギリス人を主人公にしたドタバタコメディ.ダジャレや言葉遊びあり,『一九八四年』や『フランケンシュタイン』から引っ張ってきたネタあり,あらゆるギャグやブラックユーモアをこれでもかと詰め込んでいる.なるほど,「ワイドスクリーン・コミック」(訳者あとがきより)とはよく言ったもの.どこまで真面目に取っていいのかはともかく,読んでる最中はただ楽しい.アメリカにはバカとキチガイと変態と金の亡者しかいないんだなあ,ということが非常によく分かったのでした.イエス