久住四季 『鷲見ヶ原うぐいすの論証』 (電撃文庫)

鷲見ヶ原うぐいすの論証 (電撃文庫)

鷲見ヶ原うぐいすの論証 (電撃文庫)

「なら」と、僕は言った。「あの事件は人間がやったものだって証明すればいいんだろ」
「……、はい?」
あれが悪魔じゃなくて、人間のやったことなら、お前はそもそも悪魔じゃないってことになるんだからな」
「────」
「だから、麒麟館のあれは人間の犯罪だったってことを──お前が悪魔じゃないってことを、今から俺が論証してやる」

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世界に知られる天才数学者・霧生賽馬は魔術師であるという.霧生博士による招待を受け,代理として博士の住む麒麟館を訪れた譲とうぐいす.ふたりの目的は,博士が悪魔と契約したのかどうかを確かめることである.
閉ざされた麒麟館で起こった密室殺人事件を「論証」してゆく.究極に発展した数学は魔術と区別がつかないことについて,あるいは神と悪魔の区別についての論証,というのかな.これまでの作品に比べると,より新本格っぽさを増している,のかな? 「論証」は明確な文体で書かれており,非常に分かりやすく読みやすい.神と悪魔を区別する理屈はなかなか面白い.キャラクターが弱く,どこか小手先で書いている感覚もあり(もっとやれるだろ的な意味で),あえてこれ,という魅力はあまりないのだけど…….