加藤聡 『あかてん☆ナイツ』 (ファミ通文庫)

あかてん☆ナイツ (ファミ通文庫)

あかてん☆ナイツ (ファミ通文庫)

「どれだけ嘘を重ねても演技にはならないぞ。役者が喋るのはセリフじゃなくて言葉だ。その立場に嘘はあっても言ってる気持ちに嘘はない。常に本気でものを言うのが演技ってもんだよ」
「ふーん、そうなんだ?」
よく分からないまま素直に感心していたら、思いついたようにポソッと付け加えた。
「まあ、一番大事なのは、見て面白いかどうかなんだけどね」

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都立西南高校には,通称〈赤点の館〉と呼ばれる補習クラスがある.館の常連である坂本誠の幼なじみ,栗原茜はそこで「赤点の館の女王」と呼ばれ,彼女を取り巻く「赤点騎士団」に親しみと崇拝を受けていた.そんな彼らがある日,学校の使われていないトイレで幽霊に出会って.
小さなころからの友だちでありながら,ネグレクトによってある時期から変わってしまった関係と距離.それを変えるきっかけとなるのはトイレの幽霊との三角関係だった.タイトルやあらすじからは想像できなかったのだけど,ストーリーは重い.それでいながらテンションは浮かず沈まず,綱渡りをしているようなふわふわした不安な気持ちになる文章.文化祭前の物語でもあるのだけど,そのディテールも非常に良い.あることがきっかけで「緩い笑顔」しか浮かべなくなってしまった幼なじみ,という状況は想像するときっついものがあるのよな.幼なじみというものが好きならば読んでみると刺さるかもしれない.