神尾丈治 『パンツブレイカー』 (一迅社文庫)

パンツブレイカー (一迅社文庫)

パンツブレイカー (一迅社文庫)

当社の御神体は平安の時代に打たれたとされる古い刀でございます。
打たれてから人を斬ることなく、ただただまじないにだけ使われた名刀。
どうもこの刀の最初の所有者はとても恋多く、そして陰険な性格のまじない師だったといいます。
ひたすら「他人の良縁を切り裂く」という陰湿なまじないを行使し続け、彼の死後、刀が妖怪変化となった時には、刀はすでにそういうモノになっていました。
すなわち、ただただ縁を切る刀。

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パンツブレイカー”とは,半径2メートル以内にある下着を問答無用で消し去ってしまう汐正幸の「ギフト」である.まったく制御の効かない能力ゆえ,研究機関や宗教団体に追われていた正幸と美幸の兄妹は,特殊学校法人国立醍醐学園に通うことになる.
強制的にパンツはいてない状態を作り出す能力を中心にしたエロコメ.かと思いきや,自分が制御できない強力な異能力とどのように付き合っていくべきか,について,思いのほかしっかりと考察している.まあ根っこは学園異能なんだけど,“パンツブレイカー”という能力とそれが生活に及ぼす影響の考察とギャグやらとのバランスがびっくりするくらい良い.ある種の達観にいる正幸,その兄に付き添うことを我知らずアイデンティティにしている妹の美幸など,一見ベタっぽいキャラクターにもちゃんと理屈と理由があって感心した.しっかりと完成されている.原因より現象が先にある異能力の描写がなんか奇想コレクションっぽいし,SF好きも読んでみるといいかもしれない.良いものでした.