岡本タクヤ 『武装中学生2045 -夏- 3』 (ファミ通文庫)

武装中学生2045 -夏- 3 (ファミ通文庫)

武装中学生2045 -夏- 3 (ファミ通文庫)

「あの子はいま十三歳だ。自分よりも年少の少女を、君は迷いなく撃てるか? 殺せるか? もしそれができるのなら、君はもう誰にも負けないよ」
そして優しく微笑み――それはレイジには見えなかったが――、
「でもね、僕が遠い日に憧れたのは、そういう女の子を救えるような人間だったんだ」

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「僕たちを恨むのはいい。呪うのもいい。一撃のもとに撃ち倒すのもいい。けれど――君たちの望むような物語で、僕たちを解釈することだけはしないでくれ」

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レイジたちは,PMF蛇遣い(オフューカス)よりトワの力の秘密を明かされる.『紋章』と総称されるそのシステムからトワを解放するべく,クマグスの父が経営する高城重工を訪れたレイジたちの目の前に,小さな刺客が現れる.
戦後100年目を迎えた日本で,「武装中学生」と揶揄される未来の自衛官たちと「戦争」の話をしよう.文章がどこか英米文学っぽいのは気のせいかな.ダーシの使い方がライトノベルっぽくもあり,翻訳小説らしさもある.少年兵の物語だと思って読んできたのだが,実はそうではないことに今ごろ気づいた.「歴史によって盾であることを宿命付けられたこの島国の武力」であり,なにをやらかすか予想のつかない「正義の味方」である「武装中学生」が,戦争でどのような存在であるか.なるべくしてなった少年兵と対比させ,武装中学生の特殊性と,「戦争」の普遍性をくっきりと浮かび上がらせている.
トーリーは怒涛の展開で,情報量もかなりのもの.病弱でありながら将来を嘱望される兄と,父に反発して自衛官になることを選んだ弟.強さとは何か,弱さとは何か.常に戦争に関わり続けたアメリカと,防衛学院を創設しながらも自衛隊を維持し続ける日本…….正解のない問題に対し,絶えず考え,問いを発し続ける姿勢とその物語には強く心打たれた.余裕ある執筆環境があれば『BEATLESS』のような傑作になる可能性もあると思うのよな.皆も一巻から読んでみるといい.