小林泰三 『人造救世主 ギニー・ピッグス』 (角川ホラー文庫)

「おまえは生きていても仕方がない」八番の声は怒りに震えていた。「自分で自分の心臓を抉り出せ」
ウォロンは自らの裸の胸に両手の指を立て、交互に左胸に突き立てた。もちろん、穴はなかなか開かない。右手の指がぼきりと音を立てて、折れた。
ウォロンは折れた指で石を拾った。おいおいと泣きながら、左胸に突き立てる。

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歴史上の偉人の遺伝子から超人となるクローンを生み出す,謎の組織MESSIAH.クローンの教育機関である〈家〉から揃って脱走した「できそこない」のひと桁クローンたちを,MESSIAHの刺客が追う.
クローンであるヴォルフは,おのれを生んだMESSIAHから脱走し,ただひとり孤独な戦い続ける.仮面ライダー的なダークヒーローの側面は一巻(感想)よりも強くなっているかな.よく言われる「読者を信用していない」とはこういうことを言うのか,と一巻に引き続き実感するも,なんだかんだと面白い.わざとらしくもったらもったらしている展開に挟まれるギャグ(のようななにか)は,本当に脈絡がなさすぎて電車のなかで吹いてしまった.ラストの引きも一巻同様またすごい.これは近いうちに続きを読むしかあるまい.