古橋秀之(GoRA) 『K SIDE:BLUE』 (講談社BOX)

K SIDE:BLUE (講談社BOX)

K SIDE:BLUE (講談社BOX)

「……いつか、私という人間のを見切った時、あなたは私を斬るのかもしれません」
善条は答えない。宗像の首筋を、喰いつくように凝視しながら、後に続く。
「あなたはひと振りの剣であり、暴発寸前の爆弾でもある。それは私の力であり、それでいながら、私には御しきれぬものでもある。つまりは、善条さん――」
無防備な背を鬼の目に晒しながら、宗像は笑う。
「あなたもまた、私の運命に関わる《ダモクレスの剣》なのですよ」

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警察庁機動隊に所属する19歳の楠原剛巡査は,対能力者組織である《セプター4》室長にして《青の王》宗像礼司の目にとまり,転属することになる.訓練に明け暮れる楠原はそこで,倉庫室で閑職につく隻腕の剣鬼,善条剛毅との出会いを果たす.
同名アニメ『K』の脚本家集団・GoRAのメンバーである古橋秀之が書き下ろす小説版.アニメを観ていないので分からないのだけど,前日譚なのかな? 「ケルベロス」のような鬼気迫る感覚はないとはいえ,そつなくうまくまとめる方のフルハシ,といったところか.希望を見せつつ,最後には……という,王道と裏切りのストーリーはアニメ版を知らなくともじゅうぶん楽しい.評判が(私の見た範囲では)芳しくないアニメ版よりむしろ楽しめるんじゃないかという気もする.アニメの好き嫌いに関わらず,読んでみていいんじゃないかな,と.
それにしても,登場人物がひとりを除いてすべて男性なのは,アニメと一緒なのかな.やりとりも必然的に男同士のシーンが多くなっている.不器用な隻腕の剣鬼のため,料理を作ったり背中を流したり,世話をせっせと焼く子犬系の弟子というシチュエーションとか,そっち方面が好きなひとならキャーキャー言ってもおかしくないのだけど,そういう話も見た記憶が無い.