入間人間 『明日も彼女は恋をする』 (メディアワークス文庫)

そうして去り際、松平さんに一言だけ、旅行の感想を告げておいた。
「過去に飛んだこと、悔やんでいるわけじゃないんだ」
お陰で、知ることができたこともある。ゼロじゃないんだ、僕の旅は。
だから後は、終わりよければすべてよしを目指して、また旅立ちましょう。

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「過去」の改変から戻ってきたふたりを待ち構えていたのは,互いの消失した「現在」だった.もうひとつの「現在」を求め,ひとりは現在をさまよい,もうひとりは再び9年前へと飛ぶ.
『昨日は彼女も恋してた』,『明日も彼女は恋をする』二部作の後篇.「昨日〜」の時点で細々した仕掛けがあるのは気づいていたつもりだったんだけど,なんというか,面白いくらい綺麗に騙された.ある程度ミステリを読み慣れていれば分かる仕掛けだと思うのだけど,時間構造に関する独自の,分かりやすい説明に乗せられそのまま騙された感じである.昨日書いた感想を埋めてしまいたくなるね.埋めないけどね.『紫色のクオリア』のような執念を描きながら,それとは違った決着を見せるラストはすごく良いと思う.小さな島を舞台にしたしっとりしたキツ目のラブストーリーだと思って読むといいさ.面白かったです.