六塚光 『ブラッド・スパート――2――罪人たちの仮面劇――』 (幻狼ファンタジアノベルス)

「気にすることはないよ」フロゼルが助言した。「トロイはしょうもないことに絶望を覚える手合いだから。昔、指先のささくれ一つに絶望して世界の破滅を望んでいたことがあったよね」
「あったあった」トロイはあっさりと認めた。

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保険調査員トロイ・エヴァレットのもとに,オーナーから直々の調査依頼が入る.カネ目当ての保険金詐欺かと思われた事件だったが,高額保険金を掛けた貿易商,ビアズリーは,13年前の内戦におけるカルディンガム包囲戦でトロイと因縁のある相手だった.
カルディンガム包囲戦と殺人事件が,十数年を経て結ばれてゆく.ふたつの時間軸を交差させながら,テンポ良く描いてゆくミステリ.ひたすらひょうきんなノリを保つトロイの活躍を追いかけていくと,やがて恐ろしく暴力的な物語に巻き込まれている,みたいな感覚がある.楽しいなあ.まとめにかかる終盤は少しぎこちなくなった印象もあるけど,癖のある野郎どもが活躍するストーリーはなんとも楽しい.復讐の物語はどういう決着を見るのか,次で一区切りらしいので楽しみにしたいところです(もう手元にある).