エイモス・チュツオーラ/土屋哲訳 『やし酒飲み』 (岩波文庫)

やし酒飲み (岩波文庫)

やし酒飲み (岩波文庫)

完全な紳士に変装した「頭ガイ骨」の跡を追って家までついて行ったからといって、この娘をとがめることは、到底わたしにはできないことだった。もしわたしが女だったら、わたしだって彼の跡をつけて、彼の行く所まで行っただろうし、その美しさ故に、この紳士が戦場へ行けば、敵だって、彼を殺したり捕らえるようなことはしないし、爆弾を落とそうとしていた男も、彼が町にいるのを見れば、彼のいる所には爆弾を落とさないだろうし、もし仮に落としたとしても、爆弾の方で、この紳士が町を去るまでは炸裂しないだろうから。そして男であるわたしは、それ以上に彼を嫉妬したことだろうから。(略)

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金持ちの父を持ち,十のころからやし酒ばかりを飲んでいた男がいた.しかしある日,専属のやし酒つくりの名人が木から落ちて死んでしまう.死んでしまったやし酒作りに戻ってもらうため,男は死者の町へ向かって旅に出る.ナイジェリア出身の作者による神話的,民話的な語りの「アフリカ文学の最高傑作」.「森」に対する感覚とか,天の神や地の神がもともと人間だった話だとか,面白い部分もあるのだけど,物語として個人的にはいまいちピンと来ないかなあ.訳者解説まで読んでやっと分かった部分もあり,それって牽強付会じゃね,と思う部分もあり.