- 作者: 初心音コマ,ねりま
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/11/30
- メディア: 文庫
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だが、そのとき――ルナはぐうぅと口を開けた。
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まるで猫の頭に食いつこうとしている風に映る。まさか、とヒビキは硬直した。いくら子猫の頭部といっても、ルナの小さな口には到底収まりそうもない。それなのに、猫の頭は次の瞬間、失われていた。ルナは猫の頭部を一口で食べてしまったのだ。
全身が強張り、皮膚が粟立った。ヒビキはネクタイを緩めてシャツのボタンを外し、口に溜まった唾液を喉の奥へと落とし込む。細い首が大きく蠕動した。
もぐもぐと子猫の頭を咀嚼するルナの奇怪さに、少年は見入っていた。遅れて“気持ちが悪い”という感情が滲み出てくる。ぼんやり一点を凝視したままおだやかな表情で猫を食べ続けるルナの姿は、風習に従って無言で恵方巻きにかじりつく子供のようだった。
月崎ルナは猫を食うらしい.くだらない噂だと一蹴したヒビキだったが,何気なくルナのあとをついていったところ,まさにその現場にでくわしてしまう.そこでヒビキはルナに食われ,三日後,ルナの子供として産まれることになる.
人ノ子ニ幸アレ.幸福を諦めきった少年は,世界を滅ぼす役割を負った少女に食われ,世界の敵になった.第13回えんため大賞最終候補作.西尾維新的な尖ったシチュエーションを並べたストーリー,かと思いきや異能バトル方面にいきなり針が吹っ切れ,次のシーンでは唐突に異世界から押しかけ女房が現れ,その次は擬似家族ものになり,という.あれやこれやでとっ散らかっており,見ようによってはいいとこ取りと言える.しかしストーリーに一貫性があるかないかがいまいちよく分からない.個人的には嫌いではない,というかかなり好きなほうではあるけど,どこがどう面白いかと訊かれると上手く答える自信はない.時折挟まれるポエジーな台詞には腰が砕けるが…….まあ,各人で読んで判断すると良いと思います.