カミツキレイニー 『憂鬱なヴィランズ2』 (ガガガ文庫)

憂鬱なヴィランズ〈2〉 (ガガガ文庫)

憂鬱なヴィランズ〈2〉 (ガガガ文庫)

「“王妃”であることで初めて、“自己嫌悪”の塊である彼女は自分のを好きになれるんだわ。人前では背筋を正して、つんとしてるのにさ――」
言って千鳥はその光景を思い出すように、含んだ笑顔を作った。
「部屋に籠ってひとりきりになった時は、鏡に映った自分にびくびくしながら確認するのよ。“この国で一番美しいのは誰?”って。鏡は心を映すのよ。あれは自分の声。もちろん、“美しいのはあなたですよ、王妃”って答える。王妃は毎晩そうやって、自分が自分を好きでいられていることを確認してた」

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所有した者に悪役(ヴィラン)の能力を「貸し与える」絵本,ワールドエンド・シリーズ.その一冊,『赤ずきん』の読み手である兼亮に,『金の卵を産むガチョウ』の読み手である萩原きいろが接触してくる.
現れる新たな三人の悪役(ヴィラン).絵本の悪役(ヴィラン)をテーマにした異能バトル第二巻.三組の母娘を出して『白雪姫』を母と娘の物語と解釈しながら,すべての発端である“絵本”とはそもそもどこからきたものなのかを描いてゆく.非常にバランスよく,ストーリーに乗せながら情報を小出しにしてくれる印象で読んでて腑に落ちる.悪役(ヴィラン)をモチーフにした能力を使って,相手の手のうちを探りあう.というあたりは「Fate」や「カンピオーネ!」に通じるものがあるのだけど,その能力はより狭い範囲に限定されている.そのためか勢いよりも理屈で組み立てており,丁寧で落ち着いている.それほど派手ではないんだけど,良い作品だと思います.