津原泰水 『11(eleven)』 (河出書房新社)

11 eleven

11 eleven

それでいて見えない絹子がこれまでになく恋しくて、顔の無い私は日々病院の庭に立ち尽くし、涙を流すことすら叶わずに、剥き出しの脳を乾いた風に晒している。

微笑面・改

書き下ろし一篇を含む11篇の短篇集.見世物一家の物語「五色の舟」,家出した娘の足跡を追う「延長コード」,書き下ろしの「微笑面・改」が個人的なベスト3.ほかの収録作は「迫ってくる少年」琥珀みがき」キリノ「手」「クラーケン」「YYとその身幹」テルミン嬢」「土の枕」.いずれの短篇も,その物語の世界にふっと引かれる感覚がある.ざわざわするような不穏で,美しい物語.“最高傑作”,“完璧。永遠にこの世界にひたっていたい。”という帯のコメントがまったく大袈裟ではないのよな.素晴らしい一冊でした.