深見真 『ブラッドバス』 (徳間書店)

ブラッドバス

ブラッドバス

スンニ派トライアングルの範囲内、ファルージャで米軍爆弾処理班の護衛。あるいはキャンプ・アナコンダに補給物資――新しいiPodのアクセサリやゲームソフト――を届ける簡単なお仕事。日給五〇〇ドル。薄い灰色の大地に、落書きのように広がる潅木帯。世界の果てまで行けそうな気がする長大なハイウェイ。轟音とともにはるか高空を過ぎ去っていく米空軍のF16戦闘機。銃声と爆発音。空爆のあと泣き叫ぶ人々。「超精密爆撃で民間人の被害は最小限」というたわごとにひと笑い。イラクは正真正銘のロックンロールだった。

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自衛隊第一空挺団所属の入江公威と暴力団の若頭補佐,坂爪昇平は中学時代からの親友だった.中国人の妻と結婚するため,組を抜けて雲南省へ向かった坂爪から,入江のもとへ不穏なメールが届く.予感を覚えた入江は,単身で坂爪の住む小さな町,深紅馬鎮へと旅立つ.
自衛官とヤクザのふたりが,黒社会と武警が手を結び,腐敗しきった中国の町に狂気を抱えた男たちが現れ殺しまくるバイオレンスアクション小説.中国の奥地にある小さな町に飛び交う銃器と刃物と拷問,特に肉体の描写には目を見張るものがある.格闘技やアクションはもちろん,銃により破壊される肉体の部位の描写,拷問で切り刻まれる肉体の描写,砕石機に生きたまま放り込まれた男のその後の肉の描写などなど…….エンターテイメントとしての極限にたどり着いているのではないか.魅力ある悪役もあっさり殺されるのである意味もったいない気もするが,非常にぜいたくな物語でもあると思う.