秀章 『空知らぬ虹の解放区II』 (ガガガ文庫)

空知らぬ虹の解放区〈2〉 (ガガガ文庫)

空知らぬ虹の解放区〈2〉 (ガガガ文庫)

「たださ、これってしようがないことでもあるんだよね。私たちが風変わりな性癖にうつつを抜かす自由もあれば、それに対して生理的嫌悪感を抱く自由も人にはある。受け入れられずに白い目で見られるのは悲しいことだけど、相手が抱く感情を否定することはできないから」

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演劇部の舞台公演の事件のその後.己のロリコンを自覚してしまった拓馬は,複雑な悩みを抱えながら風紀委員と脳内解放区の二足のわらじを密かに務めていた.“マリア座の怪人”として事件に巻き込んでしまったことを,演劇部員の絹針蘭に謝ろうと行動した拓馬だったが.
地下同人サークル「脳内解放区」の終わりと学園の新たな始まり.学園クライムアクション(一部『プリズン・ブレイク』)完結.政治的主張とアクションとキャラクターのそれぞれが非常に主張が強く,それでいてバランスが取れており,テンポ良く進むストーリーにうまくマッチしていてとても楽しい.主人公ふたりの兄弟仲が良いのがなんか読んでてとても良いのよね.「不健全な同人誌は“毒”ではあるが,悪ではない」という主張をくり広げたり,それに対して弾圧する側には「児童ポルノ」とはっきり言わせたり,対比のさせ方も熱い.今回で完結ということで,見るからに畳み掛けに入っているのはもったいなかったな.一巻(感想)が去年のベスト級だったのでもう完結か,という気持ち.できればもっとこの世界観での物語を読みたかった.次回作を大いに期待しております.