- 作者: 伊藤螺子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2013/03/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
湿った古雑誌の束とママチャリの横をすり抜けて、家一軒分ほどの奥行きの道を進むと、不意に空間が開ける。そこにあったのは、今にも崩れ落ちそうなモルタル壁の二階建てアパートだった。柱に打ち込まれた『小割荘』の文字のかすれ具合が、風雨にさらされ続けた歳月を思わせる。
秘密結社 来夢来人 まほうびんぼう (徳間文庫) | 伊藤 螺子 |本 | 通販 | Amazon
鉄階段の下には、どこぞの薬局から持ってきたらしきカエルのマスコットの像が置かれていた。首には木板がぶら下がっており、『この上二〇一号室 秘密結社来夢来人 お気軽にカモンジョイナス』という妙にフレンドリーな誘い文句がにじんでいる。塗装がはがれて錆びついたカエルの姿と相まって、禍々しいことこの上ない。
デビュー作『オクターバー・ガール 螺旋の塔に導くものは』(感想)以来約1年半ぶりの新作.東京都戸坂区(東京二十四区のひとつらしい)のひなびた町並みを舞台に,秘密結社 来夢来人のムラサキ頭や赤貧魔女っ子が人助けに駆け回る.日常の謎,というとちょっと違うのかもしれないけど,なんとなく『それでも町は廻っている』を思い出す*1雰囲気,というと伝わるか.日常と非日常の間の出来事なのに,二昔くらい前のお茶の間コントを髣髴とさせるドタバタ.加トちゃんケンちゃんごきげんテレビの探偵コントとかこんな感じじゃなかったかな.良い意味でバカバカしくて,とぼけたアイデアの数々が楽しかった.個人的にツボだったのが,黒電話を見たことがないのにたけし軍団は知っている雪光のツッコミ.完全に不意を突かれたわ.
*1:新刊を読んだばかりだからかも