- 作者: 岩城裕明,スオウ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/03/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「君のことが憎いよ」
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ルテアが目をこすって言った。
ピンク色に染まった頬が濡れて光っている。不意にルテアの涙はどんな味がするんだろうかと思った。なんの香りもなく、そっと舌に染み込む微かな塩味だけが残る、きっとそんな味がするのではないか。
親指の腹でその涙をぬぐう。ルテアはとくに嫌がる素振りを見せなかった。ただ、鼻先が触れ合う距離で、
「君のことが憎い」
もう一度、そう言った。
涙は、想像通りの味がした。
“世界でもっとも美しい少年が、もっとも美しい時期に、すべてを統治する。その存在を少年皇と呼ぶ。”田舎町に暮らしていた少年ナルナは,
世界樹と少年皇という世界のシステムに組み入れられ,抗い,世界の破壊を目論む美少年たちの物語.というか,ぷりっぷりのショタ小説.第一印象は『展翅少女人形館』(感想)の性別逆転版(女性がまったくいないわけではない)だったのだけど,読んでいくとその印象も薄れていく.美少年の危うさとかエロスとかそういうものがないわけではないのだけど,それよりも登場人物たちのぷりぷりきゃるきゃるした描写に強く目を奪われる.主要人物は全員男なのに,やたらめったら可愛らしい.少女漫画の文法(?)を取り入れている,というかな.デビュー作の『ようこそ、ロバの目の世界へ。』(感想)と記憶にある作風がぜんぜん違うのでちょっと驚いた.禁忌感や肉体描写がさほどでもないのは良し悪し.おかげで物語に入りやすかったけど,このテーマなら個人的にはもっとねっちりやってほしかったかな.自分の中の┌(┌ ^o^)┐が思ったほど反応しなかった.ともあれ目指せ,今年のセンス・オブ・ジェンダー賞.