日日日 『ビスケット・フランケンシュタイン〈完全版〉』 (講談社BOX)

ビスケット・フランケンシュタイン〈完全版〉 (講談社BOX)

ビスケット・フランケンシュタイン〈完全版〉 (講談社BOX)

誰かにそう言ってもらえるだけでよかった。変態め異常者めと冷遇され、傷つけられてきたから。ただ認められるだけでいい。それで報われる。
おまえの恋は紛いものだと。病気だと、唾棄されるのだけは我慢ができなかった。
どんなに世間的におかしくても、ほんとうに好きなのだ。

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1999年.人体を変異させ死に至る奇病が発見される.その発症者の屍体から発病部位を切り取り,つなぎ合わせて生みだされた少女,ビスケ.たったひとりの異形である少女は,衰退し滅亡してゆく人類にそっと寄り添う.
2009年にメガミ文庫から発売され,翌年のSF大会でセンス・オブ・ジェンダー賞を受賞した*1同タイトル(感想)に,当時未収録の書き下ろしを加えて再構成した〈完全版〉.ストーリーはほぼ忘れていたのだけど,一回目に読んだときより確実に面白く読んだ.性同一性障害から始まり,人類すべての遺伝子をその身に抱く少女で終わる.章ごとのつながりはあるようなないような,断章的な印象.あまり収束している感じではない.「遺伝子の反乱」により滅びる人類,という新しいのか古いのかよくわからない題材を,「人類ではないもの」の目を通して描いてゆく……と書くとやっぱり古い題材の作品に思えるけど,このスケールで,かつ現在の目で描いてくれるのが良いのだと思う.

*1:同時受賞は樺山三英ハムレット・シンドローム』(感想