東亮太 『リバース;エンド 恋する次元連死(ティンダロス)』 (スニーカー文庫)

なのに――この瞬間。僕はふと、奇妙な既視感に襲われた。
こんな体験を、僕は前にもしたような気がする。あれは……ゼロ宇宙? いや、そんなはずはない。そもそもあの現実世界に、こんなシチュエーションは起きやしない。
――密閉空間。迫る敵。怯える少女。しかし僕は、少女に笑顔を向けて言う。「心配するな」と。そして少女に笑顔を残し、僕は単身、敵へと立ち向かう……。
「……あ、そうか」
物語だ、と僕は気づいた。

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高校生の星宮勇輝は同じマンションに住んでいる天永紗耶香に恋をしていた.つかず離れず,微妙な距離を保つ二人.ある日,勇輝の前に“矛盾論理(パラドクス)”を名乗る少女が現れ,並行宇宙からやってくるティンダロスによって紗耶香が間もなく死ぬと告げる.
並行宇宙から連鎖的に訪れる「死」から愛するひとを守るため,少年は別の宇宙に旅立つ.東亮太の約三年ぶりの新シリーズ.別の「並行宇宙」がゼロ宇宙(この宇宙)に及ぼす影響を防ぐためにその宇宙へ赴かなければならないという回りくどい基本設定に,都合よく現れる並行宇宙へのいざない.いったいこれはどういう話なのかと首を傾げながら読んだのだけど,今のところ読んだまんまの話だと思っていいのかな.
ひとつ引っかかったのが「虚構の記憶」という言葉.引用部のように物語と現実の記憶がわりあいシームレスだったり,空想することや「物語の主人公」への言及も多く,目的意識は「妄想少女」から続いているのかなーと思った.どういう話になるのかまださっぱりなのだけど,「妄想少女」はとても好きなシリーズだったし,とりあえず追いかけていきたい.