一肇 『フェノメノ 美鶴木夜石は怖がらない』 (星海社FICTIONS)

フェノメノ 美鶴木夜石は怖がらない (星海社FICTIONS)

フェノメノ 美鶴木夜石は怖がらない (星海社FICTIONS)

「……夜石、限界だ」
俺は、吐き出すように言った。「おまえが呪われたやつだとか、関わると死ぬとか、俺は信じていなかった。でも――もう無理だ。俺は、怖い」
震える膝を叩きながら、言った。
「俺は、おまえが怖い」

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自分の住む借家(格安物件)にはなにかがいる.恐怖に震える大学生の“ナギ”こと山田凪人は,オカルトの同好の士に相談をするため,オカルトサイト「異界ヶ淵」のオフ会に参加する.そこでナギは,都市伝説のように語られる少女,美鶴木夜石と出会う.
現代の怪談.伝統的な怪談と,インターネットとを介して広がりと「意味」を与えられる部分とが融合し,優しすぎず,突き放さず,非常にバランスの取れた良いホラーになっている.ヒロインたる夜石はどう見ても人間に興味がなく,それでいてこれだけの魅力と不気味さを出せるのも面白い.ことあるごとに嘔吐するので,女の子が嘔吐する小説が好きなひとにはいいのではないかな.キャラクター小説とホラー小説を両立した,良い小説だと思いました.続きも読ませていただきます.