折口良乃 『百殺目の恋』 (講談社BOX)

百殺目の恋 (講談社BOX)

百殺目の恋 (講談社BOX)

「命は売っても心は売ったりしないから」
「じゃあ体は?」
「心よりも高いわよ」

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「殺されるほうは、地獄だった。刺されたらね、叫びたくなるの。私はうぎゃあうぎゃあマジ痛ぇって叫んでるつもりなんだけど、もうなんか体力ないから、変な呻き声にしかならないから、面白いよね」
「それなら言わせてもらいますけどね、殺す方も案外地獄ですよ」
「じゃあ、きっとここは地獄なんだね」

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高校生のゆーくんこと僕は,生徒会長の浅葱先輩から紹介された緋色先輩に一目惚れする.勢いで告白したゆーくんに,緋色先輩は自分を百回殺してくれれば,付き合ってもいいと告げる.彼女は,百回殺されるまで解けない呪いにかけられていて,それが解けない限り間もなく死んでしまうのだと言う.
定められた手順で彼女を百回殺して恋人同士になろう.電撃文庫でデビューし,越前魔太郎の中の人になった(とどこかで読んだ)りした作者の講談社BOXデビュー作.刺殺,圧殺,絞殺,殺,殺…….殺しては生き返る彼女を殺していくうち,ゆーくんや緋色さんやその周辺はいつの間にか変わっている.イメージがいろんな方面に飛んでいる気がするのだけど,好き勝手やってるなあ,という印象はひしと感じる.冷めててひねくれて,なんとなく投げやりな物語に,誰のものともわからない幻聴(とその正体),三人でひとりの三つ子の姉など,どことなく暗い幻想が入り混じる感覚はけっこう好きです.好きか嫌いかで言うと好きな方だけど,でも面白いかつまらないかと訊かれるとちょっと考えるかな.