小川一水 『天冥の標VII 新世界ハーブC』 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標VII 新世界ハーブC (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標VII 新世界ハーブC (ハヤカワ文庫JA)

「まだわかってないな。人類だよ」ハンは両手の先を、クイと自分の顔に向けた。「僕たちが人類であり、人類といえば僕たちになったんだ。厳密な意味で」

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男性24905名.女性27339名.成人1029名.残存人類,52244名.〈救世群〉(プラクティス)によって太陽系全域へとばらまかれた冥王斑原種によって,死滅しようとしている人類.セレスのブラックチェンバー内に取り残された子供たちは,生き残るために地下に新世界を構築する.
ハーブCとメニー・メニー・シープがどのようにして誕生したか.シリーズ折り返しを過ぎた第七巻.『無限のリヴァイアス』のような導入だと思って読み進めていったら,さらにリヴァイアスっぽくなっていくのが恐ろしかった.新しい形態の社会が運営されて,新しい神話が生み出される.大きな破綻の予兆はないし,滅亡するでもない.ことさらに絶望を煽るような描き方はしていないと思うんだけど,数字を出しつつ状況を淡々と描いていく語りに激しく不安にわくわくさせられた.そして一巻の「メニー・メニー・シープ」に直接つながっていく物語よ.続きがますます楽しみになりました.それにしても,『深紅の碑文』(感想)にしてもこれにしても,追い詰められた人類はゴキブリのようにしぶといなあと思ったことです.