高田侑 『雨の向こう側』 (ハヤカワ文庫JA)

雨の向こう側 (ハヤカワ文庫JA)

雨の向こう側 (ハヤカワ文庫JA)

「女ってね、緩急つけられると弱いよ」
由衣が呟いた。
「女は、理想の男子のタイプを訊かれると、たいていは優しい人って答えるけど、ただひたすら優しい男なんて魅力ないよ。あれは建前。本当は冷たそうで怖そうで、ちょっとだけ優しい、特に自分にだけ優しい男が好きなの。覚えておいたほうがいいよ」

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メッキ工場で働く29歳の未婚の母,美尋は,社長の一人息子である常務に求婚される.戸惑いながらも娘のために受ける美尋.その前に,11年ぶりに出会う男が現れる.
雨の中で出会ったふたりが11年ぶりに再会し,それから起こることと,11年の間に起こったこと.過去と現在,ふたつの恋と殺人事件.と書くとだいぶ雰囲気が違ってくるけれど,ストーリーは重く湿っている.現実に起こった震災(作中の時間は2011年の春)は別として,作中でもろもろの事件がタイミングよく起こりすぎな気がするのよなあ.ハッピーエンドではあるのだけど,なんかそういう意味で釈然としない気持ちが勝った.