入間人間 『僕の小規模な自殺』 (メディアワークス文庫)

舞い戻ってきた未来人は未来人は向き合いながら語る。
「未来が常に、現在に背を向けているとは限らない」
歩み寄ってくれることもあれば。
向き合い、対峙し。壁になることもある、と。

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なぜ、俺がレグに『選ばれた』のか。その理由を実感しつつある。
俺と彼女の距離は、適切に離れている。それを縮めることも、思い切って離れることすらできない。人の繋がりが運命であるなら俺たちには確かにそれがあるのだろうけど、その形と結びの長さは、俺にとって望むものではない。
鋼鉄のリードと首輪で管理されているようだった。

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大学生の俺のもとに,ある日喋るニワトリが現れた.そいつは自分が未来人であると言い,俺が惚れている女性が3年後に病気で死ぬと言う.彼女に死んでほしくない俺は,ニワトリ(未来人)の言うことに従い,彼女に3年間を捧げ,未来を変えるための行動をはじめる.
人類を取るか彼女を取るか,の時間SF.このひとはSFのひとがあまり好かなそうな時間SFを書くのが好きだなあ.タイムトリップや未来といった道具を,不必要な情報は出さず,洒落たテキストで使いこなしている.あまり好きではないけど器用にこなすし面白いと思う.わずかにあったかもしれない余韻を残らずぶっ潰すラストと,タイトルの許可は作者にもらっているというあとがきで二度びっくりした.しかしこれ,『僕の小規模な奇跡』を先に読んどいたほうが良かったのかな.