酉島伝法 『皆勤の徒』 (創元日本SF叢書)

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

「君は、まさか回帰したのか。だがそれなら判るはずだ。ここでは不可知の外的存在により、勾玉を内包した百々似が、無数の異星生物と共に劣化模造され続けている。それにより永劫回帰をはじめた日常が、神器の勾玉をも汚染しはじめた。だから神器を隔離し、代わりに蜑たちの脳の未使用領域を、隔世の特定保護区として用いることにしたんだ」

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異形の「社長」に従事する従業者ギョヴレウウンンの憂鬱な社畜生活を描く,第2回創元SF短編賞受賞の表題作から始まる連作短篇集.どうも,宇宙のどこかでなにやらどろどろぬるぬるした生物のようなものたちがなにか生活を営んでいるらしい,ということを恐ろしい密度で描いているらしい,という.社長と従業者から始まり,外回りやら製臓物やら胞人組織やら天降りやら,言葉遊びや当て字がこれでもかと詰め込まれ,意味を噛み砕くのに苦労するものの,なんか読んでしまう.応募時はルビもなく改行も少なかったらしいけど,さぞ読みにくかっただろうなあ.起こっていることはひどくグロいんだけど,ユーモアがあって全体を貫く神々しさもぐっとくる.良いものでした.大森望の解説はネタバレをものすごくさらっと書いてて,なんか騙されているんじゃないかと思った.