東亮太 『リバース;エンド2 夢から醒める零宇宙(エデン)』 (スニーカー文庫)

現実――。そう、並行宇宙は虚構の世界なんかじゃない。それ自体が、一つの現実なのだ。ルールに従わなければ罰せられるし、過ちをリセットすることもできない。
あの世界は、最悪な形のまま続いていくしかないのだ。

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並行宇宙からの《次元連死》による彼女の死を回避することに成功した星宮勇輝.しかし,元の世界に戻ってきた勇輝を待っていたのは,望んだ現実ではなかった.いくつもの並行宇宙を歪めていたことを知り苦悩する勇輝の前に,別の宇宙から現れた少女がある事実を告げる.
並行宇宙を渡る,逃れられない死の運命.「残酷」で「陰惨な物語」に「ハッピーエンド」を併せたというシリーズ完結巻.そもそもの並行宇宙や次元連死など,どうしてこんな設定にしたんだろう……,と一巻(感想)の時点で微妙な気持ちになったあれやこれやの大半に理由があることがわかり,抜群に面白くなっている(全部ではないのだが).おおまかに言うと世界を取るか彼女を取るか,というストーリーなのだけど,二人だけの世界の物語にとどまらず,「並行宇宙」という舞台をうまく生かしている.さすが信頼できる作家さんだぜというか,ちょっとでも疑ってしまい申しわけないというか.それだけに,「できればもう一冊ぐらい」書きたかった,「実のところ、いろいろと心残りはある」というあとがきの言葉にはため息しか出なかった.なんとか売れてくれるといいなあ.