相沢沙呼 『午前零時のサンドリヨン』 (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

「あのね、須川君……」彼女は眼を細め、僕を真っ直ぐに見下ろした。「マジックは不思議を楽しむものであって、推理小説のように解明を楽しむものではないの。わたしは推理小説を読まないけれど、須川君は小説を読んで不思議に感じた現象が、謎が解明されると途端につまらないものに思えてしまったことはない? なんだ、こんなものなのかって……」

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ポチこと須川くんが一目惚れしたクラスメイトの酉乃初はマジシャンだった.放課後にレストラン・バー「サンドリヨン」でマジシャンとして腕を磨いていた酉乃といっしょに,学校の謎を解き明かしていく須川くん.ふたりの微妙な距離はどうなってゆくのか.
第19回鮎川哲也賞受賞作.ボーイ・ミーツ・ガールな日常の謎,フィーチャリングマジック.誰かを勇気づけられる魔法使いになりたい酉乃さんがかわいらしい.というか登場人物たちみんなどっかしら可愛いところがあって良いなあ.物語の重要なパーツであるところのマジックと「魔法」と「謎」の関係というか距離感というか,繰り返し説かれるマジシャンのスタンスとか,マジックを嗜むひとでないとたぶん書けない話だろうな.丁寧で誠実な描写に,新鮮な思いを感じながら読みました.