R・A・ラファティ/浅倉久志訳 『九百人のお祖母さん』 (ハヤカワ文庫SF)

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

死にゆく人間のほんとうに主観的な記述は、めったにない。死んだ人間の大半は、生きてそのことを語れないからだ。しかし、そのあらましはこうである。
最初、彼は宙に浮く。それから、木々や岩石や武器を逆立てた地面が、猛然と彼に向かって上昇してくる。そのあとには苦痛に満ちた眠りがあり、もっとあとには、混迷に満ちた目ざめがある。

スナッフルズ

誰にも知られることなく消滅したアメリカのある町,「その町の名は?」.重なり合う世界を恐ろしくスマートに,なおかつ非常にバカバカしく描いた「町かどの穴」.賢人たちが試そうとした時間改変の結果をこれまたこの上なくスマートに描いた「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」.地球人の常識がまったく通用しないカミロイ人社会をコミカルに浮かび上がらせる「カミロイ人の初等教育「カミロイ人の行政組織と慣習」.死んでは生き返る男との一晩の宴「一期一宴」.少し(?)変わった宇宙人の来訪千客万来.といったあたりが個人的に特に好き.21の短篇を収録したR・A・ラファティの第一短篇集.これでラファティ童貞を捨てたのでSFのひとと会っても怖くないぞ.楽しゅうございました.