岩波零 『ゴミ箱から失礼いたします』 (MF文庫J)

ゴミ箱から失礼いたします (MF文庫J)

ゴミ箱から失礼いたします (MF文庫J)

そして肝心のゴミ箱に入ってみた感想は、これは何とも表現の仕様がないのだが、とにかく居心地がよかったのである。全身が言い様のない安心感に包まれ、まるで鋼鉄の鎧を身に纏ったかのように心強い。
それに加えてゴミ箱の中は、まるで広々とした名湯に浸かっているかのようなリラックス感で満たされている。本来なら狭苦しさを覚えるべきなのだろうが、不思議と外に出て身体を伸ばしたいとは思わない。というかむしろ、このままずっとゴミ箱に癒やされていたい。
僕はそのまま、ゆっくりと目を瞑った――

ゴミ箱から失礼いたします (MF文庫J) | 岩波 零, 異識 |本 | 通販 | Amazon

ごくごく普通の高校生,小山萌太は,ある日ゴミ箱に囚われ,そのまま出られなくなってしまう.萌太の前に現れたクラスメイトの水無氷柱は,そんな萌太に言う.「あんた、妖怪ゴミ箱男らしいわ」と.
突然の不条理によって妖怪になってしまった高校生が,同じく妖怪であると自称する少女といっしょに学園を駆けずり回る.第5回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞受賞作.基本的な設定や,妖怪ゴミ箱男のスペックだけ抜き出すととてもJホラーっぽい.サブタイトルをつけるなら「怪奇! 妖怪ゴミ箱男」であろう.お気楽な学園ものに唐突な不条理をまぶして,一冊の本に仕立てたこの感覚が楽しい.異識のイラストも雰囲気に合っていて良いなあ.ずっと積んでて申し訳なかったです.