境田吉孝 『夏の終わりとリセット彼女』 (ガガガ文庫)

一回壊れてしまった人と人との関係が修復されることはまず無いと僕は思う。
誰かと仲良くしていたかったら、何があっても波風を立てずに、嫌な事があっても耐えるしかない。決定的なことが起こるのだけは、頑として避けて。
友情を保つというのは、休むことなく、どこまでもどこまでも泳ぎ続けるようなものだ。どこかで休んでしまったら、もう先へは進めない。だから懸命に、両手で水を引っ掻き続けるしかないのだ。

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫) | 境田 吉孝, 植田 亮 |本 | 通販 | Amazon

夏休み.風紀委員で僕の「彼女」の桜間さんが事故で記憶を失った.クラスメイトたちや先生のおせっかいな後押しにより,彼氏の存在さえ忘れていた桜間さんと再びのおつきあいをはじめることになる.
「正義の人」であるリセット彼女と,弱くて最低なクズの僕の二度目のボーイミーツガール.第8回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作.手探りの教室内コミュニケーションを,むき身の表現でズビシズビシと描いており心にくる.これぞ青春である.記憶を失ってもあくまでまっすぐな彼女と人間関係にものぐさなくせに感じすぎる彼氏の対比.10代のときに読んでいたらすごい傑作だと思ったかもしれない.あと本筋とは直接関係ないけど,酒を飲んでスーパーで店員や客に絡むしか楽しみがない田所さんの現在過去未来が気になって仕方ないのは,自分が主人公たちより田所さんに近くなってしまったからなのかと思うと切ない.良い青春ものでした.