アンデシュ・デ・ラ・モッツ/真崎義博訳 『監視ごっこ』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

監視ごっこ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

監視ごっこ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

「HP、HP、HP……きみはまだわかってないな……きみが経験してきたことは現実じゃないんだ。それは単なるゲーム、電話のアプリケーションに過ぎなかったんだ。真実と幻想が完璧に近いほど渾然一体となっているから、あとになって考えてもどこが境界線だったかを見極めるのはまず不可能だ。“ゲーム”ということばの意味を調べてみれば私の言いたいことがわかるはずだよ!」

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職を失ったばかりの30男,HPことヘンリク・ペテルソンは,電車の中で最新式のスマートフォンを拾う.こいつはラッキー,いくらで売ってやろうかと画面を起動すると,メッセージが表示される.“ゲームに参加しますか、ヘンリク・ペテルソン?/イエス/ノー”.イエスを選んだHPは興奮と金と賞賛を得られる「ゲーム」に巻き込まれてゆく.
無職男と女刑事の交互の視線から,エスカレートしてゆく「ゲーム」を描く.あらすじが山田悠介っぽいかなと思って読みはじめ,読み終わるころには「スウェーデン山田悠介」との印象がますます強固になったという.いや決してつまらないわけではないんだけど,物語のキーになるはずのテクノロジーの描き方が非常にざっくりしているのよな.最初から最後まで一貫してざっくりしている.ハイスピードなサスペンスだと思って読めばそんなに悪くないんだけど,SFやミステリを期待すると肩すかしかもしれない.ドラッグのようなゲームの快感に耽溺する主人公(30代無職で性格的にもクズ)が姉からマジ説教をされるシーンにはなかなかくるものがあるので,そういうの(?)が好きな30代男性は読んでみてもいいかもしれないね.