カミツキレイニー 『憂鬱なヴィランズ5』 (ガガガ文庫)

『帯刀さんは悪役になることを悪役になることを選んだけれど、俺にはどうしても、あの人が悪役には思えない。あの人は、ヒロインです。ヒロインでなきゃあ。少なくとも、俺にとっては。だから俺がもう一度絵本を借りて、あの人の代わりに悪役になります』
「……でも、月夜はもう、護ってほしくないって――」
『ええ――』
兼亮は体を起こした。バサリと、体に纏わりついた雪が零れ落ちる。
「――だから今度は護るんじゃない。悪役らしく、かっ攫うことにします」

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『金の卵を産むガチョウ』の読み手,萩原きいろを確保した兼亮たち.しかし,『ハーメルンの笛吹き男』の能力を持つ“先生”により,『赤ずきん』の悪役であるオオカミに取り憑かれてしまう.
絵本作りと異能と製薬会社,という独特の組み合わせで描かれたシリーズの完結.最悪な結末が描かれた“絵本”の悪役たちの能力といい,なんか半歩ずらしたセンスが好きだったんだけど,終わり方はやや駆け足だったかな.お前がラスボスかよ! 的なクライマックスは,意外というよりも唐突すぎな気がした.つってもシリーズの分量的には良い終わり時ではあるのかな.次回作にも期待してます.