森川智喜 『なぜなら雨が降ったから』 (講談社)

なぜなら雨が降ったから

なぜなら雨が降ったから

「いつもこんな感じで、仕事されてるんですか?」
推理を駆使して、という意味だ。しかし彼女の返答はどこかズレていた。
「うん。さっきいったでしょ。私、雨女なの。だから事件に関わるときは、いっつも雨が降ってるのよねえ。すると大抵、雨がもとで関係者にボロが出てね、私はすらすらと推理できるのよ。同じような推理だから私も慣れたし。
ま、詩的にいうなら、宇宙のしわざね。私が探偵するときに雨が降るんじゃない。雨が降るときに私が探偵するんでもない。宇宙が雨を降らし、同時に、私を探偵させるのよ。突き詰めると、この世の中に許される主語はただ一つ、宇宙だけ。お分かり?」

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主人公野崎が入居したアパートの一室にある探偵事務所,「Yuregi Detective Office」.ここを経営するのは20代なかばの揺木茶々子.探偵に好奇心のはたらいた野崎は,いろいろあって「雨女探偵」の助手(ボランティア)をすることになる.
決め台詞は「なぜなら雨が降ったから」(天を指しながら).謎解きになると必ず雨が降る,降水確率100パーセントの雨女探偵登場.オーソドックスかつカジュアルな本格ミステリといった感じ.どこかほわほわしたキャラクターと,必ず雨天という特性を活かした粋な謎かけが楽しい.連作短編方式で,後半に行くにつれどことなく丸くなっていく揺木探偵が可愛い.非常に読みやすいので,本格だからと構えず,気楽に読んでみるといいかもしれない.