山田悠介 『名のないシシャ』 (角川文庫)

「日本国民全員が、明日二十四日、午後六時に死ぬ」
画面の向こうからざわめきが聞こえてきそうだった。
「なぜなら国民全員には『悪魔』が取り憑いており、その『悪魔』に殺されるのだ」
少年は目一杯脅すように言うと、フフフと不敵に微笑み、
「しかし慌てることはない。恐れることはない。ここにいる皆だけは助かる」
と言った。

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「使者」とは人間の寿命を見ることと,ひとに時間を与えることができる不老不死の存在.子供の姿のまま,50年間を生きてきた3人の使者は,名前を与えてくれたひとたちとともに15年の時を過ごす.
使者と人間が関わり続けた15年の出来事.「切なさが止まらない/泣ける度200%」の帯を見て気まぐれで買って,「えー……」という脱力しか残らなかった.だいたい3年ぶりに山田悠介を読んだけど,印象がぜんぜん変わらないなあ.問題点がとてもはっきりしている小説なので,「そういうもの」だと割りきって読めばいいのかもしれないが.きっちり経時的にことが進んでいくのが,かえっておかしさを増している気がするのよな.この規模のテロをどうやって5日で用意したのか,とか.突っ込みどころはいくつもあるけど,クリスマスイブの事件があっさり流されるのがいちばんびっくりした.これはひょっとして伏線のつもりなのだろうか…….