森田季節 『不戦無敵の影殺師(ヴァージン・ナイフ)3』 (ガガガ文庫)

不戦無敵の影殺師 3 (ガガガ文庫)

不戦無敵の影殺師 3 (ガガガ文庫)

「俺はなんとも思ってない」
閻魔様、舌を抜いてくれてもいいぞ。
今のはウソだ。
せっかく築きあげてきたものが、たった一日で壊れるなんて、あんまりだ。

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現実が言葉を奪っていく。理想を語らせるまいとしてくる。
水みたいなものだな、現実って。生きていくのに必要なものなのに、それで埋め尽くされると息ができなくなる。

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ナイト・チャンピオンシップに優勝し,「最強」の称号を手に入れた冬川朱雀と小手毬.高尾山で訓練を行っていたふたりの前に,非合法の異能力者組織「御大」の能力者が現れる.簡単に撃退されてしまったふたりは,「御大」の能力者から次のナイト・チャンピオンシップに辞退するように迫られる.
シリーズ三巻.テレビで全国的に有名になった「最強」の暗殺者,という冗談のような状況にたどり着いてやっと生活に余裕が出てきたと思ったら,それがあっさりとひっくり返され,己の理想とプライドまでいとも簡単に踏みにじられ,果ては業界そのものが一夜にしてひっくり返されかねない状況.ここまで積み上げてきたストーリーを,紙一重からこれでもかと踏みにじっていく描写の緊張感が素晴らしい.異能力者の話ではあるけど,荒唐無稽というよりは,それ以上に盤石な現代社会の話でもあるのよね.すべてを背負い込もうとした朱雀にしろ敵方の能力者の行動にしろ,「社会」がなかったらこの話は成り立たない.ラストというか後半にはなんかちょっとホッとした.あと,今回も食事のシーンがちゃんと美味そうなのが良かったです.