相沢沙呼 『スキュラ&カリュブディス 死の口吻』 (新潮文庫nex)

散らばった血と肉の塊を視た。魚を喰い散らかしたあとのように、骨と肉とはらわたが暴かれて、強烈な臭いを放っている。
涎が、止まらない。
此花ねむりは、感嘆の吐息を漏らす。
ああ――。
なんて美味しそうな、景色なの。

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連続変死事件が続く街.巷では,人狼が少女たちを食い殺しているのだと噂されていた.死をもたらすという「プーキー」と呼ばれるドラッグを探す女子高生,此花ねむりは,夜の街で出会ったクラスメイトの鈴原楓とともに事件を調べ始める.
連続変死事件と百合と血と涎とふとももの伝奇ミステリ.肉体のパーツの描写と,その総体としての肉体である少女たち(生きていたり死体だったりする)の描写がゴリゴリと重ねられる.直接的なのに美しく,そのバランスにまず目を奪われた.ストーリーの方は,未消化の部分がそこそこ目立つ気がする.ごく近未来と思われる世界には必然性が感じられなかったのだけど,続篇への引きでもあるのかな.