円居挽 『クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ』 (角川書店)

「あれ?」
ようやく振り向いた青河さんは俺の存在に今気がついたようで、後ろにいる俺を不審がることもなくこう言った。
「遠近君もオオサンショウウオ好きなんだ」
いや、好きなのはあなたなんですけどね。

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一浪して京大に入学し,お散歩サークル賀茂川乱歩に入った遠近は,同じサークルの青河幸に片思いをしていた.男子校育ちであと一歩が踏み出せない遠近は,ある晩,どんな謎でも解決するというバー「三号館」へと迷いこむ.
京都を舞台にした日常の謎の連作短篇.京大生のプリップリした青春とちょっとした謎,みたいな,スマートで可愛らしい短篇集である.青河さんをはじめとしたキャラクターがみんなユーモラスで可愛らしくて良い.「三号館」の存在の謎をめぐるなんやかんやも楽しい.気楽に読んでも楽しいし,と言ってもいろんなネタが仕込まれてそうなので,その辺を拾いながら読むのもいいのかな.吉田寮天一坊さんとか,唐突すぎて吹いたわ.楽しゅうございました.