ベン・H・ウィンタース/上野元美訳 『カウントダウン・シティ』 （ハヤカワ・ミステリ）

カウントダウン・シティ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

救済。それは、輝かしい明日に起きるものではなく、神々しい高みにある天国において起きるものでもない。今ここでの救済。

カウントダウン・シティ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) | ベン・H. ウィンタース, Ben H. Winters, 上野 元美 |本 | 通販 | Amazon

小惑星が地球に衝突する日まであと77日．元刑事のヘンリー・パレスは，知人の女性から失踪した夫の捜索を依頼される．終末に向かい，荒廃してゆく社会で，パレスは犬のフーディーニと捜査に赴く．
『地上最後の刑事』（感想）に続く三部作の二巻で，フィリップ・K・ディック賞受賞作．前作から約3か月が経過し，刑事だったパレスはすでに退職．インフラもほぼ壊滅し，交通手段はほとんど自転車くらい，かごには犬を乗せている．極端に走る人々あれば新しい秩序をつくろうとする人々あり，終末の世界であればこその人々の行動が，パレスの目を通して説得力をもって描かれる．その過程でパレスが出くわす，単なる陰謀論や，単なるヒッピームーブメントの真似事じみた退廃かと思われた与太話．これが重要な意味を持っているのではないか？　と疑い始めた時点から話の軸が良い意味で見えなくなる．これはどう決着するのかさっぱり想像できなくなったぞ．本国ではすでに完結しているとのことなので，一刻も早く邦訳が出ることを希望する所存です．