白井智之 『人間の顔は食べづらい』 (角川書店)

人間の顔は食べづらい

人間の顔は食べづらい

「違うさ。いいか、お前は人じゃないんだよ。そもそも法律上の人には、自然人と法人ってのがある。ところが五年前に、『非自然人の権利に関する法律』ってのができた。俗に言う食人法だな。この法律で、新しく非自然人って概念ができたんだ。ま、お前らみたいな連中のことだ」
「はあ。非自然人は人じゃないんですかい」

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新型コロナウイルスの蔓延により,哺乳類を食用にできなくなった二〇××年.人類は食用ヒトクローンの生産により,肉食を可能としていた.ある日,食用クローンの飼育施設から首を切り落として出荷したはずのケースに,処分された生首と血染めの脅迫状が入る事件が発生する.
第34回横溝正史ミステリ大賞最終候補作.未来日本の東北地方で起こった首付き死体送付事件の顛末.生首と脅迫状を首なし死体に紛れ込ませた犯人探しとか,もうちょっと追求すべきところがあるだろう.いちいちポイントがずれているというか,ディテールが不明瞭というか,ミステリとしては悪い意味でふわふわしている.プラナリアセンター(食用ヒトクローン飼育施設)というネーミングや,探偵登場かと思いきや実は探偵じゃなくて○○○だった,というセンスは非常にくだらなくて良かったけど,タイトルとあらすじに騙された感じではあるなあ.