北元あきの 『聖黒の龍と火薬の儀式(パウダーキス)2』 (MF文庫J)

「こうなったら派手にいこうじゃないの、大小姐(ダーシャオチェ)
坂東が懐から手榴弾を取り出しているのがわかった。安全ピンを口で引き抜き、放り投げる。高い放物線を描いた手榴弾が――爆発。
燈子は耳を塞ぎ、目を閉じた。
熱と衝撃が洋館を揺らす。すべての窓ガラスが吹き飛んで、粉々になった。明の言葉を思い出す。シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』の一節にはこうある。
皆殺しの雄叫びを上げ、戦いの犬を野に放て。

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アンティークハンターの朝霧圭は姉の明からアイリス・カスガという少女の保護を依頼される.一方,〈商会〉の雨宮燈子は〈博物館〉からスパイとして潜入していたアイリスの引き渡しを要求されていた.
あとがき曰く「銃と魔法が交錯する血と硝煙のラノベノワール」.一年ぶりの新刊になるのだけど,アクションの描写がやっぱ抜群にうまいよなあ.ひとつひとつの動作がしっかりと,それでいてテキストは非常にスムース.外連味も効いており,ノワール向きで読んでてとても気持ちいい.
縄張りと〈アンティーク〉を巡っていがみ合う香港の〈商会〉と英国の〈博物館〉.〈ネバーランド〉との魂の取り替え子である〈黒龍孩子〉(ヘイルンハイツ)こと朝霧圭.ライトノベルらしからぬ容赦の無い暴力とストーリー運びと,ライトノベルらしいキャラクターの配置の対比がうまく噛み合ってカッコよさを生んでいるのだと思う.まあ,正ヒロインのヴィクトリア・ブラウンベスが,ストーリーから浮いているというか,存在感がどんどん希薄になっていくのは仕方ないのか.ゆっくりでもいいので続きをお待ちしております.