加藤雅利 『【急募】賢者一名(勤務時間は応相談) 勇者を送り迎えするだけのカンタンなお仕事です』 (このライトノベルがすごい!文庫)

【急募】賢者一名(勤務時間は応相談) (このライトノベルがすごい!文庫)

【急募】賢者一名(勤務時間は応相談) (このライトノベルがすごい!文庫)

せめてミカゼが僕の力を必要とする時には、彼女の仲間でいてあげたい。そう考えながら、僕は自転車を走らせる。
町のどこからかは、もうそろそろ本格的に夜ですよ、を町民に知らせるための、長閑な音楽が流れていた。
兎追いし彼の山。懐かしい気分になるメロディを乗せて、秋の風が吹く。ミカゼと伝説の武器の重量を自転車で運ぶ僕には、暑すぎず寒すぎず、丁度いい季節だ。

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「賢者」の血筋に生まれた高校生,鳥居千早はクラスメイトで「勇者」の鈴木ミカゼとパーティを組み,市役所の依頼,というかバイトでで日々モンスターを討伐していた.
第5回『このライトノベルがすごい!』大賞栗山千明賞受賞作.エクスカリバーとイージスの盾を持った女子高生勇者と,それを自転車で送り迎えするだけの賢者の平凡な日常.導入から,10年後の『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』を読むような気持ちになった.ストーリーを抜き出したら本当に他愛無い話なのに,これだけ読ませてくれる小説になっているのは語りの勝利と言っていいのかな.淡々としたトーンの語りが,一歩間違えたらデレ甘なだけの青春をうまく冷やして,微妙な距離と妙な切なさすら生んでいると思うの.しかしタイトルが長すぎてトーンが伝わりにくいのはマイナスだと思うのよなあ.タイトルが長すぎて,こういうのが好きそうなおじさんの手許に届かないのではないか,と考えてしまうのは大きなお世話なのかな.