小川一水 『天冥の標VIII ジャイアント・アーク PART2』 (ハヤカワ文庫JA)

「大統領閣下……よろしいんですか?」
答えられはしなかった。
つとめて冷静な口調でエランカは言った。
「決を採ります。私たち植民地新政府は、すべての都市を実力で結び付けて指導下に置きます。賛成の方」
全員が黙黙と手を挙げた。アドルフィーがつぶやいた。
「炎の道が拓かれるのね」

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大閉日(ビッグ・クロージング)――メニー・メニー・シープから光と熱が消え,地下から咀嚼者(フェロシアン)が現れた日.メニー・メニー・シープの本当の姿を知ったカドムたちは世界天井を目指して旅に出る.地上では,新政府大統領となったエランカが植民地を守るための決断を行う.
倫理兵器(エチック・ウエポン),「アケボシ」といった懐かし(?)の名前が出てくるに連れ,オールスターが大集結していくのを見守る感覚を味わった8巻後篇.純粋な「人類」がほぼ存在しなくなった太陽系,しかし「人間」であれば何かしらの意思を伝え合うことができるはず,という一貫した意志が感じられる.作者の本領というか,THE・小川一水といえよう.ここからは完結に向かって一直線のはず,残りの2巻(2冊とは限らない)でどのように収束するのか.もう言うことはなく,ただ見守るのみでございます.